連載コラム

薬学部ホームページを制作するにあたって、薬学に関係する皆さまに向けた連載コラムをお届けすることにいたしました。今後、本学教員が定期的に連載をしてまいります。

―学びあい、互いに育つ-

安西偕二郎

薬学部長
安西偕二郎

米国の第35代大統領John.F.Kennedyは、1961年1月、誰もが記憶する就任演説を行った。「And so, my fellow Americans: ask not what your country can do for you -- ask what you can do for your country.」。 このメッセージを解釈するにあたっては、当時の時代背景や演説全体の文脈の中で注意深くあらねばならないが、「当事者意識と自発的行動」こそが、ヒトや組織を社会的な存在へ育てる行動規範であることを思い起こさせる。

話は変わるが、ごく最近まで、NHK・Eテレの番組で「グラン・ジュテ、私が跳んだ日」というドキュメンタリーが放送されていた。ご覧になった方も多くおられるのではないだろうか。様々な分野で活躍している若手の女性が、それまでの経過の中で迎えた、飛躍の瞬間を回想する番組であったように思う。誰しも、人生のターニングポイントともいえる時を一度は経験するものだ。
個人的な話で恐縮だが、大学院に進学して半年、まとまりのなかった知識が整理され、目の前に地平が広がる自由な感覚を記憶している。その事自体は学問を志す誰もが辿る、些細な道筋であろうが、当時の私にとっては、当事者意識を持って薬学研究に分け入る契機ともなった。同様に、教育に携わっていると、大学院生が変貌する瞬間に立ち会う。目つき、立ち居振る舞いから、その時、彼や彼女は、さまざまな事をバネにして「跳んだ」のだろうと思う。6年制薬学教育が始まる5年程前に、修士課程・医療薬学コースの立ち上げに携わったことがあるが、そのコースでは半年間程の病院実習を学ぶので、進学には薬剤師免許の取得が条件であった。その結果、彼らは調剤を始め、病棟業務、救命救急、緩和ケアなどで、プロフェッショナルとしての「役割と責任」を与えられ、修了の時、「学ぶことによって、変わって行く自分を感じた」と感想を述べていた。きっと「役割と責任」に導かれ、医療の当事者として学ぶ、そういう確かな感覚に目覚めたのだろう。今でもその言葉は忘れられず、想い出すと幸せな気持ちに包まれる。教育とは、まさに教員と学生が学び合うことである。

私どもの背中を押すものが、学生の成長であるのに違いはない。5年次以降のカリキュラムには、未だ納まりの悪さを感じているが、過去の教育システムが生み出していた良きアウトカムも指標にしつつ、学生が「社会や医療における当事者意識と自発的な行動力」を備えるよう工夫を続けたい。

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