連載コラム

薬学部ホームページを制作するにあたって、薬学に関係する皆さまに向けた連載コラムをお届けすることにいたしました。今後、本学教員が定期的に連載をしてまいります。

薬剤師の仕事と車の衝突防止装置

私は、医療事故に関わる裁判事例を研究の素材として、薬剤師の在り方について、様々な提案をしています。そんな中で最近気になっていることをお話しします。

皆さんはテレビコマーシャルで、乗用車が壁に衝突する直前にブレーキが作動し、車が止まり、衝突するのを防ぐ場面を見たことはありませんか。この衝突防止装置の広告では、安全対策の高さを宣伝しています。この宣伝に隠れた意味について、次の事例から考えてみましょう。

薬剤師の行う調剤業務にも安全対策は進んでおり、私が実際に見学した中で最も進んでいる薬局のシステムは、次のようなものでした。この薬局では、ほとんどの患者の処方箋には処方情報が含まれる3次元バーコードも印刷されています。この処方箋は受付・処方確認後、ベルトコンベア上のトレーに乗せられ、自動調剤装置に送られます。この装置の中でバーコードが読み取られ、処方された薬がトレーに集められ、薬剤師さんのカウンターに運ばれてきます。薬剤師さんは処方と薬の確認後、患者さんとモニター上の薬の情報提供書を見ながら説明していました。

ここで話した薬局の調剤業務の中に2回「処方の確認後」と書かれていたことにお気づきのことと思います。この処方の確認は薬剤師の任務や業務を規定した法律(薬剤師法)の中で「薬剤師が調剤する前に必ず行わなければならない」事項の一つになっています。調剤上の確認ミスを防ぐために多くの病院・薬局では、そこで使用する薬のデータベースが備わったコンピュータシステムにより、その処方が不適切な場合に警報が発せられるようになっています。これは最初に述べた車の衝突防止装置と同じようなものです。ある大きな病院で、比較的使用の少ない医薬品の処方において、この警報が出なかった時に起きた医療事故で、亡くなられた患者さんの遺族は「警告機能に頼るのであれば,薬剤師という資格は必要ない」と訴え、裁判所は「薬剤師がシステムを信頼していたことにつき,正当な理由は認められない」と指摘しています。

車の運転でも、調剤でも、ミスを回避するための様々なシステムは、信頼できる根拠の範囲内においてのみ有効なのです。裁判の事例で言えば、薬剤師が自身の薬学的知識によりシステムからもたらせる情報のミスを見つけられないのであれば、その薬剤師にさらに必要な調査・確認することを求めているのです。薬剤師を目指す皆さんには、是非この点を知って頂き、薬の関わる医療事故を「0」にし、国民から負託されている役割を理解し、それを自負できるようになって頂きたく思っています。

こちらもチェック

  • 入試情報
  • キャンパスライフ
  • 進路・就職

ページのトップへ戻る