連載コラム

薬学部ホームページを制作するにあたって、薬学に関係する皆さまに向けた連載コラムをお届けすることにいたしました。今後、本学教員が定期的に連載をしてまいります。

薬剤師の仕事と倫理

薬学部教授
田村 京子

私は倫理学を専攻し、医療の領域における倫理問題を考えてきた者ですが、医療職の業務内容について詳しいわけでありません。薬剤師についても、薬局で清潔な白衣を着て、およそ覚えにくい薬の名前をよどみなく紹介して過不足ない説明をする薬の専門家というイメージをもっているくらいでした。

しかし、幸運にも薬学部で教えることとなり、薬剤師はずいぶん幅広く活躍しており、患者が知らないところでの業務も多いこと、そして医療倫理の観点も必要なことがわかってきました。たとえば、私たちが医師から渡された処方箋を薬局にもっていくと、薬剤師が調剤をしてくれますが、薬剤師は単に薬を用意するだけではなく、医師の処方通りに薬を出してよいかどうかをチェックしているのです。この薬で間違いないか、この処方量でよいか等、なんらかの疑義があれば、医師に照会することが薬剤師の義務でもあります。これを医療における倫理原則の観点からみると、患者さんにとって善いことを行うという「善行原則」と、患者さんへの危害を防止するという「無危害原則」に該当する行為だとみることができます。

政府が導入しようとしている「かかりつけ薬局」制度では、複数の医療機関を受診している患者が自分でかかりつけ薬局を一つに決め、その薬局で自分が服用している薬を一元的に管理してもらうことになります。そうすることで、複数の診療科にかかっている場合、別々の医師から出された薬を一緒に服用しても大丈夫かどうかを薬剤師にみてもらうことができるのです。また、病気が重くなったりして薬局まで行けなくなったときには、薬剤師が患者宅まで出向いて服薬指導をしてくれます。薬剤師は副作用が出ているかどうか、残薬がないかどうか等を確認して医師に報告し、場合によっては医師に処方の変更を提案するといった業務を行うのです。これも倫理原則の観点からいうと「善行原則」「無危害原則」に該当しますが、同時に医療行為は患者さんや家族の気持ちを尊重して行われるべきものですから、「自律尊重原則」に則っているとみることができます。ちなみに、今あげた原則は医療倫理の基本とされるものです。

実際には薬剤師は専門的知識をもとにその都度その都度判断しており、必ずしもなんらかの原則を自覚しているわけではないでしょう。しかし、それを「倫理原則」の観点から解釈することによって、薬剤師の仕事の倫理的側面がよりはっきりします。そして、次の問題への対処方法がより適切なものになっていくのではないかと思います。

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