研究者紹介
プロフィール
明治薬科大学大学院薬学研究科修了(博士 薬学)。
独立行政法人 物質・材料研究機構 生体材料センター 先端医療材料グループにて「細胞の機能化を目的とした肝細胞培養系の作製」研究に従事。2009年より現職。
体の免疫システムの主役である抗体は、1つの抗体が1つの抗原を認識する特異性を持ちます。この性質を利用して、特定の細胞や物質や分子の働きを抑制あるいは活性化する効果のある抗体医薬品を開発したいと考えています。
一般的な抗体は軽鎖と重鎖が2本ずつ結びついた構造をしています。ところが、ラクダやアルパカなどラクダ科の動物では、重鎖のみで構成されている抗体があり、その先端部分だけで標的と結合することができます。この部分は分子が小さく化学的に安定なため、医薬品開発への応用が期待されています。
図:アルパカ一本鎖抗体の医薬品への利用
現在、抗体医薬品が使用されている病気としては、リウマチや白血病、乳がん、大腸がん、感染症などがあります。治療効果が従来の薬を大きく上回り、副作用も少ないため、今後も医薬品市場において重要な位置を占める薬と考えられます。
メリットは、標的に対する特異性が高いので、効果が高く副作用の少ない医薬品が作れることです。デメリットとしては、従来の抗体医薬品は低分子医薬品に比べて分子量が非常に大きいために、注射による投与のみで飲み薬にできないことが挙げられます。現在研究を進めている一本鎖抗体は分子量が小さく化学的に安定なため、このデメリットを解消できる可能性があります。
大学時代の卒業研究で、こんなに面白い世界があったのか、とすっかり実験のとりこになりました。生命活動には未知の領域がたくさんありますが、実験によって自分が最初に知ることができるのはワクワクします。更に薬学における研究は、病気に苦しむ多くの患者さまを救うことを目標としています。「人の役に立つ仕事がしたい」という幼い頃からの夢に近付けるのでは、と考えました。
本学薬学部では、薬について基礎から臨床まで広く学び、実務実習で医療現場に出て、医療に対する理解を深めます。また、大学では、生命現象の解明や病気の原因究明、医薬品の開発などを目的とする様々な研究が展開されています。現場のニーズや患者さまの苦しみを知り、広い視野で医療と研究を捉えることができれば、更に新しい薬学研究が広がると考えます。これからの医療技術の発展に、是非皆さんの力を活かして下さい。