連載コラム

薬学部ホームページを制作するにあたって、薬学に関係する皆さまに向けた連載コラムをお届けすることにいたしました。今後、本学教員が定期的に連載をしてまいります。

薬学部で学ぶことと山登り

小松俊哉

薬学部教授
小松 俊哉

薬学部で学ぶということは、薬剤師のライセンスを目標に勉強するということは勿論であるけれど、薬学という学問を学ぶということでもある。ここでは、薬学部で学ぶということはどんなことなのか、薬学部で学び始めている君たちに、山が好きな私が日頃思っていることを綴ってみたい。

ご存知のように、日本の薬学部は、薬剤師の養成を主眼とする6年制と、薬学研究者の養成を主眼とする4年制の二本立てで構成されている。本学のような私立大学薬学部、私立薬科大学の多くは6年制薬学部で、薬剤師の養成を主眼としている。6年制のカリキュラムは濃密で、入学して驚いたかもしれないが、薬学生はとにかく忙しい。ほぼ全ての科目が必修であり、特に専門系の科目は選択の余地がほとんどない。試験もしょっちゅうある。大学に入ったら、ひとまず遊んでやろう、という考えは通用しないことを実感しているだろう。いわば、6年間、下りのエスカレーターを登り続けるようなもので、ちょっと気を抜くと(サボると)たちどころに下り始めてしまう。とは言っても、毎日登校して友人たちとともに授業に出席し、疑問点を残さずにコツコツ積み重ねていけば何も恐れることはない。それは、未踏峰の高山を単独で登るのではなく、登山道が整備された高山、たとえて言うなら、富士山の山頂を目指して一歩ずつ、登山グループの仲間と海抜0メートルから登るようなものである。五合目まではバスで行こう、などという訳にはいかない。

しかし、そこには、教員という登山ガイドがいるし、友人という登山仲間もいる。また、地域の医療従事者や一般の方々、大学の事務職員といったサポート隊もいる。そして、講義だけではなく、大学内で行う実習や大学の外に出て行う体験学習、そして研究室に配属されて行う卒業研究など、さまざまな変化に富んだ登山道が用意され、それらは一本道ではなく、バリエーションに富んだルートである。途中の七合目付近(4年次の終わり)には、薬学共用試験という、いわば仮免許試験がある。この試験に合格すると、大学の外に出て実際の医療現場での実務実習を行うことになり、卒業、国家試験合格という山頂が見えてくる。山頂から振り返れば、登ってきた登山道は何と広い裾野をたどる長い道のりであったことか、苦しいことも楽しいこともあった登山を振り返って感慨深いものがあるだろう。もっとも、登山と違うのは、登頂すなわち、卒業や国家試験合格が最終目標なのではなく、そこからさらに先に人生という縦走路が待っている、ということである。そういう意味では、富士登山よりも、北アルプスの長い長い縦走の方がたとえに合っているかもしれない。しかし、6年間の登山で得た知識はもちろん、そこでさまざまな困難を乗り越えてきたという経験はきっと長い人生のキャラバンの役に立つに違いない。

ところで、薬学部で学ぶ内容はとても幅が広く、私が専門としている有機化学などの基礎系科目はもとより、文系科目から臨床系科目まで、多種多様である。ということは、薬学部で学んでいる君たちの興味を引く分野がきっとある、ということである。はるか昔、私は高校で有機化学が純粋に面白いと思った。化学の先生が持っていた雑誌(おそらく、月刊化学)に記載されていたベンゼン環の構造の不思議さや炭化水素の構造とその多様さに興味を引かれた。そして、そんな小さなことがきっかけとなって有機化学を勉強することに決め、今も有機化学と、それを通して学生諸君と向き合う毎日である。大学に入ってから好きな分野を見つけても決して遅くはない。

薬学部の勉強は大変だよ、と最初に書いたけれども、面白いと思うことが見つかると、少なくともその分野に関しては勉強が大変ではなくなる(と思う)。卒業後、どんな道に進むにしても、しっかりした基礎を一つ持つことは重要である。6年制の薬学部に入ったからには薬剤師を目指すことは勿論であるけれど、ぜひ「薬学を学ぶ」姿勢をもち、面白いと思うことを見つけて欲しい。それは、どんな仕事に就くにしても必ず役に立つ。薬学部という登山隊に入り、頂上を目指す登山道で、美しい高山植物や雲上の絶景を見つけるように興味ある分野と出会い、それを楽しみ、はぐくんで実りある人生の縦走路を歩んで欲しい。

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