ユニット紹介

細胞機能教育研究部門
膜機能ユニット

ユニットの目標

ヒトの体は60兆個もの細胞から構成されており、相互に情報を伝達して統合された生命活動を営んでいます。細胞や細胞内の小器官は脂質二重層構造の膜に囲まれており、膜を介して物質や情報の交換を行っています。私たちのユニットは、生体膜の新しい機能を研究し、病態の解明や医薬品への応用を目標にしています。現在、エキソソームあるいはマイクロベシクルと呼ばれる細胞外膜小胞に注目し、その機能を調べています。また、膜リン脂質からプロスタグランジンE2を合成するPGE合成酵素の機能について解析を行っています。

研究テーマ

1)細胞外膜小胞の機能解析の研究

ホルモンや神経伝達物質などが細胞や組織の間の情報伝達を行っていることはよく知られていますが、最近、細胞から分泌されるエキソソームという細胞外膜小胞が新しい情報伝達役として注目されています。エキソソームは分泌細胞のタンパク質やRNA、さらには細胞に感染した菌やウィルスの成分などを含んでいます。分泌されたエキソソームは別の細胞に取り込まれ、情報を伝えると考えられています。私たちはヒト唾液中にエキソソームが豊富に含まれることを見いだし、その構成成分の同定や、免疫系への作用を調べています。唾液は簡単に採取できるので、研究が進めばエキソソームで病気の指標(バイオマーカー)を簡便に調べられるかもしれません。また、エキソソームを使った薬物輸送や経口ワクチンへの応用が期待されています。

研究テーマイメージ

2)受容体或いはトランスポーターの細胞内結合タンパク質同定による機能解析

細胞膜に発現した受容体やトランスポーターは、細胞外のシグナルを細胞内に伝えたり、細胞膜直下に運んだ物質をさらに細胞内外へと輸送するために、細胞内で何らかの他のタンパク質と相互作用して機能します。細胞内で受容体やトランスポーターと結合するタンパク質をアフィニティーカラム法を用いて探索・同定し、機能解析を行います。本アプローチにより、これまで見えてこなかった受容体やトランスポーターの新たな機能や分子機構が解明されることが期待されます。

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3)プロスタグランジンE合成酵素の解析

生体内で多様な作用を示すプロスタグランジン(PG)と呼ばれる一群の化合物の中で、PGE2は主要生成物であり、生合成経路の最終段階にPGE合成酵素(PGES)が関わることが知られています。当グループは細胞質型PGES (cPGES)を欠損したマウスを用いた解析により、cPGESが生存に必須なタンパク質であることを明らかにしました。また、cPGESが他のタンパク質と結合することや他の遺伝子の発現に影響することを見い出しており、cPGESの様々な生命現象への関わりを多角的に理解することを目指しています。

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発表論文

  • Ogawa Y, Akimoto Y, Ikemoto M, Goto Y, Ishikawa A, Ohta S, Takase Y, Kawakami H, Tsujimoto M, Yanoshita R. “Stability of human salivary extracellular vesicles containing dipeptidyl peptidase IV under simulated gastrointestinal tract condition” Biochem. Biophys. Rep. 27, 101034, 2021.
  • Kumeda N, Ogawa Y, Akimoto Y, Kawakami H, Tsujimoto M, Yanoshita R. “Characterization of Membrane Integrity and Morphological Stability of Human Salivary Exosomes” Biol. Pharm. Bull. 40, 1183-1191, 2017.
  • Nakatani Y, Miyazaki Y, Hara S. “Cytosolic prostaglandin E synthase is involved in c-Fos expression in rat fibroblastic 3Y1 cells.” Biol. Pharm. Bull. 40, 1963-1967, 2017.
  • Ogawa Y, Tsujimoto M, Yanoshita R. “Next-Generation Sequencing of Protein-Coding and Long Non-protein-Coding RNAs in Two Types of Exosomes Derived from Human Whole Saliva.” Biol. Pharm. Bull. 39, 1496-507, 2016.
  • Ogawa Y, Taketomi Y, Murakami M, Tsujimoto M, Yanoshita R. “Small RNA transcriptomes of two types of exosomes in human whole saliva determined by next generation sequencing.” Biol. Pharm. Bull. 36, 66-75, 2013.
  • Ikemoto M, Arai H, Feng D, Tanaka K, Aoki J, Dohmae N, Takio K, Adachi H, Tsujimoto M, Inoue K. “Identification of a PDZ domain-containing protein that interacts with the HDL receptor SR-BI” Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 97, 6538-6543, 2000.

お知らせ

2021/04
中谷良人教授が当ユニットに着任しました。
2017/08
“Characterization of Membrane Integrity and Morphological Stability of Human Salivary Exosomes” が「Biological and Pharmaceutical Bulletin」2017年40巻8号のHighlighted Paper selected by Editor-in-Chiefに選ばれました。
2016/12
小川裕子准教授が、第61回日本唾液腺学会学術集会(2016年度)において学会奨励賞(基礎的研究)を受賞しました。

受賞演題及び受賞者
ヒト唾液由来の2種類のエキソソームに含まれる RNAの次世代シーケンサーによる網羅的解析 ○小川裕子・辻本雅文・矢ノ下良平(帝京平成大学薬学部)

2016/09
“Next-Generation Sequencing of Protein-Coding and Long Non-protein-Coding RNAs in Two Types of Exosomes Derived from Human Whole Saliva.”が「Biological and Pharmaceutical Bulletin」2016年39巻9号のHighlighted Paper selected by Editor-in-Chiefに選ばれ、雑誌の表紙に掲載されました。

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