薬学部ホームページを制作するにあたって、薬学に関係する皆さまに向けた連載コラムをお届けすることにいたしました。今後、本学教員が定期的に連載をしてまいります。
2019年10月掲載
薬学部での学び
薬学部教授
清水 俊一
6年制私立薬学部のストレート卒業率、すなわち、留年や休学をせずに6年間で卒業できる学生の割合の低いことが指摘されている。確かに、他学部に比べるとストレート卒業率が低いようである。ストレート卒業率が低い要因に、卒業に際して各大学が薬剤師国家試験合格レベルの専門知識の修得を求めていることにあるだろう。薬学部は、薬剤師国家試験を受験できる唯一の学部であり、ほとんどの学生が卒業後医療に関わる人材として活躍する。従って、社会に対する責務を果たすという意味でも、薬剤師国家試験レベルの専門的知識の修得を卒業要件の一つとすることは必要であると思われる。それでは、如何にしてストレート卒業率を高め、薬剤師国家試験の合格率も高めるのか、この相反する課題について、学生と協力しながら取り組まなくてはならない。6年制薬学教育は、専門知識に加えて、問題解決能力、ヒューマニズム・倫理観、コミュニケーション能力、実務・研究技術の修得など多岐にわたり、そのいずれもが重要であることは言うまでもないが、このコラムでは、ストレート卒業率低下の主な原因になっている専門知識領域の薬学部の学びについて考えてみたい。
薬学部では、ストレート卒業率を高めるために、リメディアル教育、補習授業、授業科目への演習の導入、試験問題の適切性の検討など様々な取り組みを進めている。しかし、学部や教員がどんなに工夫しても、実際に学問を修得するのは学生であり、学生の取組みが重要であることは言うまでもない。
私は、薬理学という薬物がどのような機構を介して生体に効果や副作用をもたらすのかを学ぶ科目の教育に当たっています。薬理学を学ぶためには、体の各臓器がどのような働きを持っていて、どのような機構で調節されているのか、様々な病気がどのような機構で発症するのか、さらに薬物の物性(化学)など、より低学年で学んだ知識が必要です。そして、薬理学の次には薬物治療学があり、患者さんの病態に合わせて、どの薬物を選択すべきか学ぶ科目へと発展していきます。さらに、これらの修得した専門知識は、4年次や6年次の総合的な科目で評価されます。このように、薬学部での学修は積み上げ式であり、低学年で修得した知識が高学年で活きてきます。逆に言うと、低学年での知識の修得をおろそかにしていると、高学年で苦労し、最悪の場合留年につながります。もしかすると、高等学校での学習は、大学受験に必要な科目だけ繰り返し学習し、必要のない科目は一夜漬けであったかもしれません。薬学部では、低学年から一つひとつの科目を大切にしてほしいと思います。大学及び教員は、学生に興味を持って学修してもらえるように様々な工夫をし、より良い評価方法の確立を目指します。学生諸君も、薬学に興味を持って、専門知識の修得を目指してほしいと思います。そして、ストレート卒業を目指しましょう。