連載コラム

薬学部ホームページを制作するにあたって、薬学に関係する皆さまに向けた連載コラムをお届けすることにいたしました。今後、本学教員が定期的に連載をしてまいります。

2022年3月掲載

6年制薬学部の紹介

水間俊

薬学部教授
平 裕一郎

このコラムの読者には、高等学校の生徒さんで進学先として薬学部・薬剤師に興味を持っている方も多いと思います。本コラムではそのような生徒さんに向けて、薬学部の紹介と薬学部を卒業して国家試験に合格すると取得できる資格である薬剤師の仕事について書いていきたいと思います。

本稿は、2021年の3月に東京都西部のある都立高等学校の1年生に向けて薬学部の紹介を行なった際の原稿を基にしています。以下の①~⑤について紹介していきます。

①「薬学・薬学部」の特徴・薬剤師とは
② 薬学部でどんな勉強をするのか
③ 学費・奨学金について
④ 入試制度・対策について
⑤ 卒業後の進路

①「薬学・薬学部」の特徴・薬剤師とは

薬学とは、病気の治療や予防に使われる医薬品をはじめ、「薬(くすり)」を総合的に研究する学問となります。

薬学部は4年制の主に研究者の養成を目的とし薬剤師免許を取得できないコースと、6年制の薬剤師の養成を目的とし薬剤師免許を取得できるコースの2つがあります。 大阪大学では4年制を廃止し6年制のみにするなど、近年6年制のコースが主流になってきています。

薬剤師の仕事は1行で表現すると、「医師の処方せんに基づいて「調剤」すること」となります。これは薬剤師の独占業務といわれていて、医師は,一部の例外を除いて薬局において薬剤師の行う「調剤」業務を行うことはできないこととなっています。「調剤」とは、医師・歯科医師・獣医師から発行された処方せんが正しいかを確認し、薬剤を計数・計量して患者に薬剤を交付するまでの一連の流れを表現した言葉となります。

薬剤師になるには、大学の薬学部か薬科大学に設置されている6年制の薬剤師養成課程を修了し、薬剤師国家試験に合格することが必要となります。

② 薬学部でどんな勉強をするのか

薬学は、大きく基礎薬学と医療薬学の2つに分けることができます。6年制の薬学部では、1年生から2年生にかけて物理学・化学・生物学などの基礎薬学を学び、2年生から4年生にかけて薬理学・薬剤学・薬物治療学などの医療薬学を学びます。その後、5年生で薬局・病院での実務実習を行い、この体験を通して、臨床を学びます。6年生では、4年生から取り組み始めている卒業研究のまとめと国家試験対策を行います。

併せて、1年生から6年生までの全体を通して、薬剤師としての使命・薬剤師に求められる倫理観や医薬品等に関わる法規範など、薬剤師(医療人)としての姿勢も学びます。

③ 学費・奨学金について

学費は、初年度納付額(入学金+授業料)として219万円(全国私立薬科大学平均額)となり、卒業までの6年間納付額は1,210万円(全国私立薬科大学平均額)となります。他の学部より高額かもしれませんが、日本学生支援機構の給付型/貸与型奨学金および調剤薬局などの企業からの奨学金・奨学金返済支援制度を利用すれば、経済的な負担は軽減できるようになっています。

例えば、日本学生支援機構では給付奨学金の対象者が広がり、世帯収入の基準を満たしていれば、成績だけで判断せず、しっかりとした「学ぶ意欲」があれば支援を受けることができるようになりました。世帯収入400万円の家庭では、最大108万円の支援が受けられます。詳細は日本学生支援機構のホームページを参照してください。これに加えて、調剤薬局などの企業から、月に5万円程度の無利子の奨学金の給付を得ることも可能です。このタイプの奨学金は給付先の企業に新卒として薬剤師として勤務すると返済義務が免除されます。このような制度を活用すれば、20代の時の就職先に制約がかかりますが、経済的に余裕があまりない状況でも就学は可能であると考えられます。

④ 入試制度・対策について

ここでは、私立薬科大学のスケジュールを記述します。3年生の秋から冬にかけて、推薦・総合選抜入試が実施されます。試験は、基礎学力確認試験(化学が多い)、小論文、面接、書類審査(志願者調書および調査書)となります。年明けの1月中旬に大学入学共通テストがあり、大学入学共通テストの成績を用いて出願する場合は、理科、外国語、数学の中から大学が指定する2、3科目の成績で合否が判断されます。理科は必ず含める大学が多いです。1月の下旬から3月にかけて、一般入試が行われます。理科、英語、数学から2、3科目を受験します。理科は化学であることが多いです。対策としては、薬学部の受験をするなら、化学を中心に勉強することをお勧めします。大学進学後も必要となる知識です。

⑤ 卒業後の進路

2020年3月の6年制の学生の進路は、薬局・ドラッグストアが58.3%、病院が23.3%、医薬品関連企業が8.5%、化学系企業が0.9%、行政が2.5%、卸売販売業が0.6%、進学(大学院)が1.7%、研究生が1.2%、その他が3.0%となっています(薬学教育協議会「令和2年3月薬系大学卒業生大学院修了者就職動向調査の集計報告」より)。大半(8割)の卒業生が薬局・ドラッグストア、病院に就職します。

最後に

本稿は、2021年の3月に多摩地区のとある都立の高等学校の1年生に向けて薬学部の紹介を行なった時の原稿を基にしています。まだ1年生ですのであまり真剣に聞いてもらえないかもしれないと思いながら話し始めましたが、意に反してとても熱心に聞いてもらえました。今後の進路の参考にしていただければ幸いです。

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